Updated

複数のチャットをまとめる「Beeper」をAndroidで使ってみた

Android版Beeperを実際に使い、複数チャットをまとめる使い勝手と、On-Device接続・Beeper Cloud・LINE bridgeの信頼範囲を整理します。

Author

kinn00kinn新しい記事を見逃さない

最近Xで、複数のチャットサービスを一つのアプリにまとめられる「Beeper」を知った。

LINE、WhatsApp、Signal、Telegram、Slack、Instagram、Xなどのメッセージを、同じ受信箱で確認できるアプリらしい。日本語で検索すると、対応サービスや導入方法を紹介する情報は見つかるものの、メッセージや認証情報がどこを通るのかまで説明したものは見つけにくかった。

そこでこの記事では、Android版を実際に使った感想に加えて、Beeperの接続方式と、利用時にどこまでBeeperを信頼する必要があるのかを整理する。

Androidにインストールしてみた

Android版はGoogle Playからインストールできる。Beeperのアカウントを作成した後、追加したいチャットサービスを選び、それぞれの案内に従って認証する。

サービスによってログイン方法は異なるが、特に迷うことなく接続できた。接続後は、異なるサービスの会話が一つの受信箱に並び、メッセージの送受信や画像の表示、リアクションなども通常のチャットアプリと同じ感覚で使えた。

実際の画面

対応サービスはOSや接続方式によって異なるため、固定の一覧を掲載するより、実際のアプリ画面を載せるほうが分かりやすい。

対応しているアプリ

実際に使って感じた利点

Beeperの良さは、単に複数のサービスへ対応していることではなく、メッセージを確認するための画面を一つにできることにある。

LINEやInstagramの公式アプリには、ニュースやタイムライン、ショッピングなど、チャット以外の機能も含まれている。Beeperでは会話を中心としたシンプルな画面になるため、メッセージの確認と返信に集中しやすい。

また、どのサービスで受け取ったかを覚えていないメッセージも、Beeper上からまとめて検索できる。ただし、取得できる過去の履歴や利用できる機能はサービスごとに異なり、通話などでは公式アプリが必要になる場合もある。

観点使用感
UI余計な情報が少なく、会話を確認しやすい
管理複数サービスの未読を一つの受信箱で処理できる
検索サービスをまたいでメッセージを検索できる
機能基本的なチャットは使えるが、公式アプリ固有の機能には対応しない場合がある

チャットを確認するために複数のアプリを行き来している人にとっては、かなり便利なアプリだと思う。

便利さとは別に確認したいこと

一方で、複数のチャットを一つにまとめるアプリは、セキュリティ上の影響範囲も大きい。

Beeperのアカウントや端末が侵害された場合、一つのサービスだけでなく、接続している複数の会話へアクセスされる可能性がある。また、Beeperは各チャットサービスの公式クライアントではないため、接続方法によっては、サービス側の仕様変更や利用制限の影響を受ける可能性も考える必要がある。

そこで重要になるのが、Beeperが各サービスへどのように接続しているかである。

Beeperの仕組み

Beeperは、サービスごとに異なる通信方式を「bridge」と呼ばれるプログラムで変換し、一つの画面へ表示している。

概念的には、次のような構成になる。

LINE / WhatsApp / Signal / X

            bridge

          Beeperの画面

現在のBeeperには、bridgeを利用者の端末内で動かす「On-Device」と、Beeperのサーバー上で動かす「Beeper Cloud」という二つの接続方式がある。

この違いは、画面上の使い勝手よりも、メッセージと認証情報の扱いに表れる。

項目On-DeviceBeeper Cloud
bridgeの実行場所利用者の端末Beeperのサーバー
各サービスへの接続端末から直接接続Beeperのサーバーから接続
接続先の認証情報端末内Beeperのサーバー
メッセージ履歴主に端末内サーバーに暗号化して保存
複数端末での利用端末ごとの設定が必要同期しやすい

On-Deviceでは、Beeperの説明上、メッセージや接続先サービスの認証情報はBeeperのサーバーを通らない。公式アプリ以外にBeeperとbridgeを信頼する必要はあるものの、データをクラウドへ預ける範囲は小さい。

一方、Beeper Cloudでは、各サービスへ接続するための認証情報やメッセージ処理をBeeper側へ任せることになる。保存された履歴は暗号化されるが、bridgeそのものがクラウド上で動くため、On-Deviceとは信頼する範囲が異なる。

特にLINEは、現時点ではBeeper Cloudを利用した接続のみとなっている。LINEをシンプルな画面で扱える利便性はあるが、On-Device対応サービスと同じ条件ではないことは理解しておきたい。

LINEはどのように接続されているのか

Android版でLINEを追加した際には、認証の途中でChromeが開いた。この挙動だけを見ると、BeeperがWeb版LINEを内部ブラウザで表示しているようにも見える。

しかし、公開されているLINE bridgeの実装を見る限り、BeeperはLINEのWeb画面をそのまま埋め込んでいるわけではない。

BeeperのLINE bridgeは、LINEとMatrixの間でメッセージを変換する独立したプログラムであり、LINEに対しては自身を「LINE Chrome Extension client」として識別する。つまり、Chrome拡張版LINEと同じ種類のクライアントとしてLINEへ接続し、取得したメッセージをBeeperで扱える形式へ変換している。

概念的な通信経路は、次のようになる。

LINE

LINE Chrome Extension clientとして接続するbridge

Matrix / Beeper

Android版Beeper

認証時にChromeが開くことと、チャット画面そのものをブラウザで動かしていることは区別する必要がある。Chromeはログイン処理に利用されるが、ログイン後のメッセージ取得や形式変換はbridgeが担当する。

また、LINEはChrome拡張のセッションを一つしか許可していない。Beeperのbridgeにログインすると既存のLINE Chrome拡張のセッションが無効になり、反対にChrome拡張へログインするとbridge側のセッションが無効になる。両方を同時に使うことはできない。

Beeperの通常のアプリで提供されているLINE接続は、現時点ではBeeper Cloudのみである。そのため、Android版BeeperがLINEへ直接接続するのではなく、Beeperのクラウド上で動くbridgeがLINEへ接続し、メッセージをBeeperアプリへ同期する。

一方、LINE bridgeのソースコード自体は公開されており、Bridge Managerを使って自分の環境で動かすこともできる。したがって、「LINE bridgeはCloudでしか動かせない」のではなく、Beeperが一般ユーザー向けに提供している接続方式が現在Cloudのみ、という整理が正確である。

運営元と公開コード

Beeperは2020年に設立され、2024年にWordPress.comなどを運営するAutomatticへ買収された。運営会社や利用規約、プライバシーポリシーは公開されており、配布元の分からない個人製アプリではない。

また、各チャットサービスとの接続を担当するbridgeの多くは、ソースコードが公開されている。接続部分を第三者が確認できることは、セキュリティを考えるうえでプラス材料になる。

ただし、公開されているのは主にbridgeなどの重要な部分であり、現在配布されているBeeperアプリ全体が完全なオープンソースというわけではない。「オープンソースだから安全」と判断するのではなく、ブラックボックスになっている範囲を減らす材料として見るのがよい。

まとめ

Beeperは、複数のチャットを一つの受信箱で管理できる、実用的なアプリだった。UIはシンプルで、サービスをまたいだ検索も便利である。

一方、安全性はBeeper全体を一括して評価するのではなく、bridgeが端末内で動くのか、クラウド上で動くのかを分けて考える必要がある。

この記事で整理したかったのは、この接続方式の違いである。対応しているサービスではOn-Deviceを優先し、Cloudのみのサービスでは、利便性と預ける情報を確認したうえで利用するのが現実的だと思う。

参考文献

この記事を書いた人

kinn00kinnSoftware / Research / Writing